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「……モナカァー?」 「ええ。…もしかしたらお嫌いでしたか?」 「否……」 最中と理不尽 その時、益田は我が目を疑った。以前依頼者から戴いた何やら高そうな最中を お八に出した時、自分は耳が千切れるんじゃないかと思うくらいに両側に引っ張 られたものだ。なのに探偵は何も知らない凡人に怒鳴りもせず、喚きもせず、殴 りもせず、あまつさえ笑みすら浮かべていた。今日の午後、丁度八時(やつどき)に本島俊夫が風呂敷包みを携えて事務所に現 れた。本島は少し前に薔薇十字探偵団が関わった事件の依頼者だ。今日は事件の 解決の礼に来たようだ。 まぁ、今日は今朝からおかしいなと思ってはいた。榎木津が朝から、それも自 分が出社する前から起きていたのだ。それもきちんと服を着て。 「本島さんが来るんですって」 安和が教えてくれた。あの作業着の男か、と、群衆に埋没しそうな顔を思い浮 かべる。 「何で」 「何でって謝礼に決まってるじゃないかよ。解決したんだから」 「解決ぅー?ありゃ解決って言うんじゃないよ。粉砕って言うんだ」 「とにかく来るんすよ」 「ふうん」 朝は本島が来ることと、榎木津が覚醒していることを結びつけられずに、変わ ったこともあるモンだなぁと思った。 そして今、混乱の境地にいる。 「和寅くん…あのオジサンはどうしたんだよ」 「……さぁ」 「最中食ったよ」 「食ったな」 「笑ったよ」 「笑ったな」 「昨日の夕飯、傷んでたんじゃないか?」 「私がその日に作ったんだ。傷んでる訳ないだろう?」 「でもおかしいだろ、あれは」 榎木津は大分上機嫌だ。にこにこと笑い、湯飲みを口に付けている。とりあえ ず最中は一口つけただけで止めたようだが、それでもしきりに美味しい美味しい と誉めている。 例えばの話、あの小説家が同じ最中を持って行ったならばただでは済まないだ ろう。まずは猿と罵り嗤い蹴り上げる。それからその最中をいくつか手にして小 説家の口に押し込むだろう。そしてどうだどうだと馬乗りにならんばかりに小説 家を苛めるに違いない。容易に想像できる。 それがどうだ。 「…そう言えば」 「何だよ」 「……先生、昨日、本島さんから電話が掛かってきたとき…」 「先生、本島さんからお電話です」 「本島!この前のコか!?どうしたんだ!」 「明日、事務所に来るそうですよ。ですから何時が都合いいですかって」 「代われ!」 それから榎木津はさも嬉しそうに時間を指定し――それもお茶の時間に――し ばらく会話をして――恐らく一方的に――受話器を下ろした。 「明日、三時のおやつに本島くんが来るぞ!」 そう言って仁王立ちになった。 「って訳でミョーに乗り気だったんだよなー」 「ミョーに、ねぇ」 「まるで若い男がデェトに行く前みたい」 「ああ、あ?」 「何だ。妙な声出して」 「それだよそれ、デェトだ」 「デェトぉ!?」 「デェト!それはいい考えだ!」 いきなり榎木津が我々のひそひそ話に割って入ってきた。 「あれ?本島さんは?」 「寄るところがあるからと帰った。動物園に熊猫でも見に行くようだぞ」 「は?ああ、でも帰られたんですね」 「それはそうと、デェトだ!素晴らしい考えじゃないか!よし、本島くんとデェ トしよう!」 「榎木津さん、本島さんは男…」 「煩いぞカマオロカ。僕がしたいと行っているんだからな。そんなもんは理由に ならん」 「オカマは嫌いだって……」 「そんなもんは理由にならーん!!」 まさに雄叫び。耳をつんざく宣言に、僕と安和は目を瞬かせた。 「さぁそうと決まればプランを立てなくてはな」 意気揚々と意味もなく腕捲りをし、奥の寝室へと歩く榎木津の背中を呆然と見 送り、僕らは顔を見合わせた。 「これは…一体……」 「古本屋の先生に相談します?」 「関係ないと追い返されるだけだぜ」 何て理不尽な探偵様だ。 面白いものが好き、つまらないものは嫌いなあの男が、全てが平均平凡平穏な あの配管工にどうしてああもご執心なのか。『つまらない』はずだ。何の特徴も ないのだから。 「理不尽だ」 「恋とは理不尽なものなんだよ、益田君」 知った口を聞くなと僕は安和の頭を小突き、仕方なく冷めた焙じ茶を啜った。 我が愛しのおタキすんから戴いた 榎 本 で す よ !(興奮) ヤベェ超絶可愛い。しかもみんなちゃんと京極キャラだよ! 柑吉のヤツみたいに捻くれてないよ!(をい おタキすんは「榎本だけどメイン和寅と益田(笑)」とか仰ってますけど何ですかマジ堪らんです……! 絵もさる事ながら文も書けるなんて何て羨ましい……! 柑吉にも分けてやって欲 し、い な…!! ではでは、おタキすん本当に有難う御座いました!! |